いつもの帰り道。
私は一匹の猫と出会った。
『やぁ』
え?声?どこから?
『疲れてるの?』
見渡すと、そこには……一匹の猫がいた。
『人間はいつも忙しそうだね』
「そう…だね。って、え?猫って喋れるの?」
『ボクラはいつも話しているよ?ボクラの声を聴かないだけじゃないか。』
「え?そうなの?」
猫は微笑み空を見上げた。
『知ってた?今日は流星群なんだよ?』
「流星群・・・?」
見上げると流れ星が見えた。
人生で初めて見たかもしれない。
「わぁ……!」
優しい声で、猫の声がする。
『最近、空は見上げているかい?』
『空を見上げることが出来るのは、
心に"ゆとり"があるからだよ。』
『心に"ゆとり"があると、
自分にも人に優しくなれる。』
『自分や人に優しくしたり、
感謝を伝えたり、
抱きしめたり、
大事にすると……』
『その愛は自分に返ってくるんだよ。』
猫は優しい眼差しのまま空を見上げて話していた。
『難しいかい?』
『実はそんな難しいことは、どうでも良いことなんだ。』
『"空を見上げるって事は良いことだよ"ってボクは伝えたい』
『朝焼けの煌めき、
一瞬も同じ景色はない雲の動き。
夕方の切なくなる色味の美しさ、
夜の星の瞬き……』
『どの瞬間もボクは大好きなんだ。』
『だから……』
『ボクの事見たら思い出して、空を見上げて欲しい。』
『ボクの大好きな空を、多くの人に見て好きになって欲しい。』
『それがボクの想いだよ』
猫はそこでジッと、
空を見上げたまま語らなくなった。
「……空か。」
私も一緒に空を見上げる。
今まで空なんて見上げる余裕も、見上げてみようとすら思わなかった。
けど、きっと私は猫を見かける度に空を見上げると思う。
そして私は空を見上げることが好きになると思う。
何故かわからないけど、そんな気がした。
そんな不思議な流星群の夜の日の出来事―
不思議な猫と空の物語―